日タイ 二重課税 不動産の問題について結論から言うと、タイの不動産から得た所得は「タイと日本の両方で課税対象になり得る」ものの、日タイ租税条約と外国税額控除を正しく使えば、同じ所得に二重で満額課税される事態は基本的に避けられます。ポイントは、自分が日本の居住者なのか非居住者なのかという判定と、タイで納めた税金を日本の申告でどう差し引くかの2点です。この記事では、タイに不動産を持つ日本人投資家が押さえておくべき仕組みを整理します。
バンコクのコンド投資は利回りが魅力です。JLLの調査(2025年)ではバンコクの平均グロス利回りは約6.05%とされ、AsiaPropの掲載物件データでもスクンビットの1BRコンドの平均価格は約704万バーツと、賃貸に回せば一定の家賃収入が期待できます。ただし、その収入に「どの国で、いくら税金がかかるのか」を理解しておかないと、手元に残る金額の見通しが狂ってしまいます。
二重課税はなぜ起きるのか
二重課税とは、同じ所得に対して2つの国がそれぞれ課税しようとする状態のことです。タイの不動産から家賃収入や売却益を得ると、まず「所得が発生した国」であるタイで課税されます。これは不動産の所在地国が課税権を持つという国際的な原則によるものです。
一方で、もしあなたが日本の「居住者」と判定される場合、日本は全世界所得課税の考え方をとっているため、国外で得た所得も日本で申告・課税の対象になります。つまり、タイで一度課税された同じ家賃収入や売却益が、日本でもう一度課税対象として扱われる——これが二重課税が生じる基本構造です。
ここで重要になるのが、日本とタイの間に結ばれている「日タイ租税条約」です。この条約があることで、どちらの国が優先的に課税するか、二重課税をどう調整するかのルールが定められています。条約と国内法を組み合わせて使うことで、負担を一度きりに近づけられるわけです。
タイの不動産所得にかかる税金
タイの不動産から得られる所得は、大きく「賃貸収入」と「売却益」の2つに分けられます。
賃貸収入については、タイの個人所得税の対象となり、家賃収入から一定の必要経費を控除したうえで累進税率(5〜35%)が適用されます。非居住者であっても、タイ国内の不動産から生じる所得はタイで課税されるのが原則です。源泉徴収の形で先に納める場合もあります。
売却益については、コンドミニアムを売却する際に移転登記税・特別事業税・印紙税・源泉徴収税といった税金がかかります。特に取得から5年未満で売ると特別事業税3.3%が課されるなど、タイ側の税負担は保有年数によって変わります。売却時の税金の詳細は別記事で扱っていますが、いずれもまず「タイで」課税される点は共通しています。
たとえばAsiaProp掲載の1BR平均約704万バーツの物件を、利回り6%前後で賃貸に回すと年間の家賃収入はおよそ42万バーツ(約190万円前後)になります。ここからタイで必要経費や税金が引かれ、さらに日本の居住者であればこの家賃収入も日本の不動産所得として申告対象になります。金額が大きくなるほど、二重課税の調整をきちんと意識する重要性が増していきます。
つまり、賃貸でも売却でも、タイ国内でまず税金が引かれ、そのうえで日本の居住者なら日本でも申告が必要になる、という二段構えになるわけです。
租税条約と外国税額控除の使い方
二重課税を調整する中心的な仕組みが「外国税額控除」です。これは、外国(タイ)で納めた税金を、日本で計算した税額から差し引ける制度です。たとえばタイの家賃収入に対してタイで税金を納めた場合、その金額を日本の確定申告で控除できるため、日本とタイで合計して支払う税金が「二重」にならないよう調整されます。
ただし、外国税額控除には控除限度額があり、タイで納めた税金が全額そのまま戻る・引けるとは限りません。日本の税率より高い税負担分は控除しきれないこともあります。また、控除を受けるには日本での確定申告が必要で、タイで納税したことを証明する書類(納税証明など)を保管しておくことが大切です。
租税条約は、こうした調整の前提となるルールを定めるものです。条約の内容や運用は改定されることもあるため、実際の申告にあたっては国税庁の資料を確認するか、国際税務に詳しい税理士に相談するのが確実です。「条約があるから自動的に二重課税にならない」のではなく、「正しく申告して初めて調整される」と理解しておきましょう。
居住者判定と183日ルール
二重課税の扱いを左右するのが、自分が日本の居住者なのか非居住者なのかという判定です。ここでよく登場するのが「183日ルール」です。
一般に、1年のうちどれだけの日数をどの国で過ごしたか、生活の本拠(家族・職業・資産の所在)がどこにあるかなどを総合的に見て、居住者・非居住者が判定されます。日本に住民票を残し、生活の拠点も日本にある人は日本の居住者と扱われやすく、全世界所得が日本の課税対象になります。逆に、タイに長期間滞在して生活の本拠を移し、日本の非居住者と判定されれば、日本での課税範囲は国内源泉所得などに限られます。
ただし、住民票を抜けば自動的に非居住者になるわけではなく、実態で判断される点に注意が必要です。日本に持ち家や家族を残したまま単身でタイに長期滞在しているようなケースでは、日数だけでは判定できず、生活の本拠がどちらにあるかが重視されます。タイ移住を機に不動産投資を始める方は、自分がどちらの居住者に当たるのかを早めに確認しておくと、申告のミスや想定外の納税を防げます。判断に迷う場合は専門家に相談しましょう。
日タイ二重課税のポイント
- タイの不動産所得(賃貸収入・売却益)はまずタイで課税され、日本の居住者なら日本でも申告対象になるため、二重課税が起こり得ます。
- 日タイ租税条約と外国税額控除を使えば、タイで納めた税金を日本の税額から差し引け、二重に満額課税される事態は基本的に避けられます。
- 外国税額控除には限度額があり、控除を受けるには日本での確定申告とタイの納税証明の保管が必要です。
- 自分が日本の居住者か非居住者かは183日ルールなどで総合判定され、課税範囲が変わります。
- 制度は改定されることがあるため、国税庁の資料確認や国際税務に詳しい税理士への相談が安心です。
税金の扱いを正しく押さえておくと、利回りから手取りまでの見通しが立てやすくなります。タイ不動産の税金全体や売却時の税金については、関連記事も合わせてご覧ください。
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